加賀レンコンの蓮蒸し
ー加賀の大地が生んだ料理ー
今回の「蓮蒸し」は金沢で料亭・ホテルを経営している「浅田屋」の小村勇総調理長にプロのコツをお願いいたしました。
蓮蒸し(はすむし)の蓮とは、蓮根の事です。
蓮根を使った料理といえば、一般的に蓮根の形を利用した「花れんこん」など歯ざわりを楽しむ料理が多いのですが、加賀料理には加賀野菜の「加賀レンコン」(小坂れんこん)を使い、すりおろして蒸した料理です。いま、その土地にしか育たない「地方品種」は、栽培が難しく大量生産できないため、どんどん姿を消していっています。
金沢でも同じで、そのため官民一体で アピールすることによってやっと全国に良さが認められ脚光を浴びるようになりました。
1世帯あたりのレンコンの消費量を調べました。
全国平均は年間900円ですが、金沢では2300円消費しています。
レンコン好きの金沢人です。
加賀れんこんには、粘りが強くもっちりとして、シャキシャキする相反するような 食感があり、特に新物の「青掘り」は生で食べるとシャリッ、シャリッとまるで梨を食べているような食感でありながら、成熟期のすりおろした蓮根は、餅のような粘りとからみつくような口当たりの甘さがあります。
蓮蒸しはこの粘りと甘さを利用した料理です。蓮根が一般的な野菜であるため全国的にも「蓮蒸し」という料理は広く見られます。
ただどの料理法を見てもすりおろした蓮根のつなぎに片栗粉を入れて作ります。
時には食感にモチモチ感を加えるため白玉粉や餅粉を加える場合もあります。
ところが加賀レンコンは粘りがありますので片栗粉なしに料理出来るのです。
他のれんこんと比べて穴が小さく、小ぶりだが肉厚で、同じ大きさでも重量はずっしりと重いものになります。つまり繊維が密集していて身がしまっている訳です。
噂では蓮根の穴の数も1個多いなんて言われていますが、今回、小村総調理長と蓮根畑を訪れて生産者の藤田氏に問い合わせた所、
「味は比べても、穴の数なんて数えたことはない」
「大事なのは穴より味でしよ」
なんていわれました。
(〃^∇^)o_彡☆あははははっ
昭和3年、日本で始めてカウンターでお客様が欲しい物を食べる割烹の業態が生まれたのが京都の「たん熊」さんといわれています。
金沢の一番の繁華街・片町には大正創業の「久善」という割烹屋がありました。
実はもう廃業しているのですが、先代・先々代にわたり随分と私どもの店はお世話になりました。
この店の名物が「蓮根蒸し」(れんこんむし)でした。(蓮蒸しではなく蓮根蒸しと言っていた所に注意して下さい。)
ちょうど、いまの蓮根の品種の原種「枯れ知らず」ができたのが明治42年だったので、レンコンとともにこの店は大きくなっていきました。
加賀野菜が逼塞しそうになった時、この店は暖簾を閉じてしまいました。
その他にも「いだ」とという店もありました d(^-^)ネ!それでは、じわもんレシピの始まり始まり。
小村さん、あとはヨロシクネ。
見渡す限りの蓮根田
集荷場も見てきました
箱詰め前の蓮根を見つめて小村氏は新しい料理を考えているのかも
こうやってとるんだョ。重労働サ。気さくに教えていただいた藤田氏に感謝。
蓮根の美味しさの秘密を探るのぶチャン
★蓮蒸し レシピ★
<蓮蒸し>
●蓮根・・・250g
●塩・・・少々
●みりん・・・20cc
●卵白・・・1ヶ
●あなご・・・4切(味付済)
※ウナギ蒲焼でもOK
●湯通しした海老・・・4匹(掃除済)
※海老は完全に火を入れずにサッと通すだけにしましょう。
●銀杏・・・6ヶ
●木の芽・・・6枚
●お茶漬アラレ・・・適量(塩なしが良い)
●ワサビ・・・適量
<銀あん>
●だし汁・・・360cc
●薄口醤油・・・20cc
●みりん・・・20cc
●塩・・・少々
●水溶片栗粉・・・適量
①蓮根の皮を剥き、すりおろす
*プロのコツ
蓮根を包丁で剥く時は、アクがまわらないよう常に拭きながら剥いて下さい。
*プロのコツ
蓮根をおろすときは丸く円を書くように。
繊維が細かく、粘りがでて甘くなります。
②ボールに入れ、リードで出てきた水分をふき取る。
*プロのコツ
蓮根本来の旨味が抜けるので押さえて水分を取らない。
あくまで流れ出る余分の水分を取るのが目的。
水分も蓮根の旨味が凝縮されています。
③塩・みりん・卵白を加え、混ぜ合わせ味を調える。
④リードで出てきた水分をふき取る。
⑤蒸しあがった時、くっつかない様クッキングペーパーか薄板をひく。
⑥パイレーシまたは器にアナゴをならべる。
⑦ならべたアナゴの上に海老をはみださないようにのせる。
⑧さきほどつくった蓮根をかぶせる。
*プロのコツ
底の深い器で蒸すと、時間がかかります。
バイレーシのない場合は、底の浅い器で蒸しましょう。
⑨銀杏の皮を剥き、半分にカットして蓮根の上にのせる。
⑩蒸し器に入れて15分程度蒸す。
⑪蒸している間に、鍋に出し汁・薄口醤油・みりん・塩を入れて温める。
⑫水溶き片栗粉を少しずつ加えて好みの濃度にする。
*プロのコツ
とろみは温度が低くなるほど粘りが出てきます。
柔らかすぎるかナ〜と思うくらいがベストです。
⑬蒸しあがった蓮根に銀アンをかけ、木の芽・お茶漬アラレを載せて提供する。
*プロのコツ
食感の違うお茶漬アラレを加えるのがミソです。
柔らかくモチモチした食感の蓮根とカリッとしたアラレの食感が木の芽の香りと合い間って食欲を増進させます。
★プロの裏技★
もちもちした食感の加賀蓮根が手に入らなかったらどうするって?
つなぎに片栗や白玉粉を入れる人もいます。
でも、これは一押し!!
卵白を入れる時、メレンゲのように泡立てて入れて下さい。
これだけで粘りが出てつながりますョ。